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ミステリの祭典

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プロムナード・タイム

作家 樹下太郎
出版日1963年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2018/07/11 03:12登録)
 そういえばこんなのも読んでたなあ。古書価がクソ高いので、公共システムを積極的に活用しないとまず読めません。図書館の相互利用貸借システム万歳。
 分類的には短編集というよりショート・ショート集。そちらの方では結構重要な位置付けらしいです。全33編収録。
 中では北村薫「謎のギャラリー こわい部屋」に収録された「やさしいお願い」がやはり出色。これは確かにアンソロジーに取り上げられるだけの逸品です。
次点は「肥後守」。「やさしいお願い」よりは若干落ちるものの、こちらも文字通り肌に突き刺さるような感覚の小品。そして更に落ちて表題作「プロムナード・タイム」ですかね。レア繋がりで小泉喜美子さんの「幻想マーマレード」が頭に在ったので、あらすじ紹介などから読む前はSFかと思ってました。若いカップルの皮肉な恋愛模様の話です。
 これらに次ぐ出来の作品もチョボチョボあって、しみじみした語り口で読ませるのですが数は少ない。収録作が多くてバラエティ豊かなのは良いのですが、橋にも棒にも掛からない駄作が大半。「怪人ギラギロ現わる!」「弁慶医師の女難」など、読者に挑戦!系の作品はタイトルからしてダメそうです(実際駄目でした)。若干甘く見て、合格点は全体の2~3割という所でしょうか。「これを読まずに日本ミステリは語れない!」とか煽ってるサイトも見ましたが、絶対ウソだとここで断言します。
 でもこの人の文章はあんまりクセが無くて良いですね。乾いた感じなのに叙情的と言うか。東方社の造本も良いので、財布に余裕があれば清水の舞台から飛び降りてみるのもいいかもしれません。あくまで余裕があれば、の話ですが。

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