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ミステリの祭典

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マフィアをはめた男
ノンフィクション/文庫版邦題『フェイク マフィアをはめた男』

作家 ジョセフ・ピストーネ
出版日1989年09月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 tider-tiger
(2018/07/10 20:34登録)
FBIの捜査官ジョセフ・ピストーネはニューヨークのマフィア組織に潜入捜査を試みる。マフィアに近い人物や平の構成員と付き合いを始め、やがて組織に認められて幹部クラスにまでのし上がっていく。そして、ピストーネのもたらした情報はマフィア壊滅作戦へと昇華していく。

これはノンフィクションです。ジャンル選定に悩みましたが、その他として小説枠に登録としました。落合信彦ことノビー訳。この時点でなんとなく胡散臭さを――失礼!――感じてしまうが、もちろん胡散臭くはないノビー作品もあるわけです。

ピストーネ氏がマフィアに信用され、出世していく過程はエンタメ小説顔負けの面白さで、リアリティは抜群だし、ここに家庭の問題やら友情やら、己の正体が発覚する恐怖やらが絡んできて読み応えは抜群。マフィアの内幕ものとしてはピカイチではないかと。
ピストーネ氏の用心深さは尋常ではないが、マフィア構成員たちの疑り深さもまた尋常ではない。下部構成員に食い込むだけでも非常な困難が付きまとう。ゆえに序盤は話の進行は遅々としている。このへんがまたリアルでいい。ノンフィクションなので、エンタメ作品であれば描かれなかったであろう細部も描かれ、エンタメとしては賛否あるのではないかと思う。
『ゴッドファーザー』なんかを読んでいるとドンの家の前で警護をしている連中なんかは雑魚キャラでしかないが、本作を読めばそうした雑魚キャラになることさえもかなり大変なんだということがよくわかる。ワルなら誰でもマフィアの一員になれるってわけではないのである。審査のようなものがあって、定員も決まっていたり、とにかく徹底した信用社会である。一般的な信用とは異なるものではあるが。
知名度はいまいちの作品だが、非常に面白い。
映画化もされているが、映画は観ておりませぬ。

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