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ミステリの祭典

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熱波
87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1983年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点
(2018/07/09 00:48登録)
 華氏102度(気温39℃)の中、黒に近い茶色に変色し膨れ上がった死体。旅行先から帰宅した妻の急報を受けてアパートに赴いたキャレラ達は、密閉された室内から溢れ出す悪臭に後退りした。覚悟の自殺と思われたが、猛暑の中切られていたエアコンのスイッチがキャレラの注意を引く。一方相棒のクリングは、有名モデルである妻オーガスタの言動に違和感を抱いていた・・・。
 87分署シリーズ第35弾。次作「凍った街」とは色々な意味で対になっています。その一つがクリングの恋愛模様。本筋の事件は動きが少ないだけに、こちらがメインと言っていいでしょう。自分の妻を尾行するクリングですが、ここで彼を逆恨みする妻殺しの元受刑者が現れ、マグナムで付け狙われる展開となります。
 と、ここまで聞くとかなりヘビーで良い感じなのですが若干期待外れ。手斧で浮気した妻の頭をぶち割って、再開した娘に拒絶された白人男とか、被害者の前妻で戦場で17人殺したイスラエル軍の元大尉とか、面白いキャラは出て来るのですがその割にパッとしない。
 元受刑者はぶっ放したマグナム弾をクリングの浮気調査に利用されるだけ(最後もアッサリ加減)で詰まりません。両者の境遇が現在では共通するだけに、ここはぜひ心情を重ねる描写が欲しかったところです。
 シリーズのターニングポイントになる作品なのですが、全体に消化不良気味で的を絞り切れなかった感じですかねえ。お得意のモジュラー描写も今回は低調。リーダビリティは前作「幽霊」の方が上を行っています。
 それなりに力が入ってるのは分かるので4点は付けませんが、ミステリ部分も単調で良くないし実質4.5点相当かなあ。高評価もありますが、ぶっちゃけクリングへの同情票だと思います。

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