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ミステリの祭典

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世界の終わりと始まりの不完全な処遇
恋する吸血種シリーズ/改題『花村遠野の恋と故意』

作家 織守きょうや
出版日2018年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2018/07/06 17:16登録)
(ネタバレなし)
 小学生の男子・花村遠野は、ある夜、屋外での血まみれの殺人事件を目撃。奇妙なことにその事件現場の事後処理を取り仕切るのは、外見は高校生ぐらいの不思議な美少女だった。遠野はそんな彼女に心を奪われてしまう。やがて当の少女の正体も不明なまま9年の歳月が経ち、大学生になった遠野は実質的な部員が4~5人だけのオカルト研究サークルに所属。そんな遠野の胸中には、あの美少女への今も変らない想いがあった。その遠野とサークル仲間の近辺で、ある夜、怪異で猟奇的な殺人事件が発生する。そして事件の捜査のために遠野の前に現れた2人の女性。それは遠野の記憶のままの容姿の美少女・朱里と、その姉妹と思しき美女・碧生だった。
 
 書籍の帯で堂々と謳っているのでここで書いてもよいと思うが「初恋」「吸血」を主題にした、青春謎解きミステリ。
 その帯の惹句に「巧妙な伏線の数々。あなたは何度もダマされる!」とあるので、ほほう、と思って読んでみた。作中では吸血行為をする亜人種が登場するが、その全部が蛮行を平然と行ういわゆる「吸血鬼」という認識ではない。そういう人たちは、一般人との平和裡な共存もまったく可能な「吸血種」と称される。なんか菊地秀行の「魔界都市シリーズ」の戸山住宅の面々みたいだ。
 こんな設定のなかで理性を失った一部の謎の吸血種の犯行らしき事件が語られ、ではその吸血種の正体は? というのを主眼にした、一応はフーダニットである。
 物語にはさらに複数のサプライズが用意されているが、この辺は悪い意味で描写が丁寧すぎて、いくつかのネタは早々に丸わかりしてしまう。なんというか、いかにも言葉を弄しそうな弁護士兼業の作者らしく、ウソを書かない書かないと気を使った分、ソコがかえってアダになってしまった感じだった。会話も多い割りに、登場人物が一度に口にする「」の間の情報が不自然に長いのも、気にかかるしな。この辺のくどさもソレっぽい。
 ただまあ前述のフーダニットの部分は、個人的にはちょっと面白かった。わかる人にはわかってしまうだろうけど。
 でもって主人公の恋愛描写の方は、これをおっさんの作者(30代の末)が書いて、さらにオレみたいなおっさんの読者が読んでるかと思うと赤面するようなベタベタぶり。嫌いじゃないけど、けっこうイタい。21世紀の高校生向けのラノベでも、なかなかここまで恥ずかしい感触のものは少ないような。
 まあ織守センセ、こういうものも書けるんですね、という器用さについては、素直にホメておきたいです。

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