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ミステリの祭典

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酸っぱいブドウ/はりねずみ

作家 ザカリーヤー・ターミル
出版日2018年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 猫サーカス
(2018/07/02 14:30登録)
内戦によって亡くなった人は40万人超、1100万人以上が国内外で避難生活を送っている状況下にあるシリア。そこで暮らす人々の日常の一端をうかがい知ることができる短編集。59もの話を収めた「酸っぱいブドウ」の主な舞台は架空の街で、住民たちの無情だったり不条理だったり悲惨だったりするエピソードが、時にユーモラスですらある乾いた筆致で綴られていく。登場人物の多くは善人ではなく、幸運をもたらすのは往々にして悪事。でも、それはシリアという国の現実を風刺的に描くための作者の仕掛け。これは、”反語”と読むべき掌編集。併録の中編「はりねずみ」で描かれているのは、男の子の目を通した中流家庭の日々。妖精や木の声が聞こえる耳を持つ少年の語り口がマジカルな好編。

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