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ミステリの祭典

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ハードボイルド・アメリカ
小鷹信光

作家 評論・エッセイ
出版日1983年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2018/06/26 12:19登録)
ロスマク「ミッドナイト・ブルー」で小鷹氏のハードボイルドに対する真摯さに妙に評者は打たれてしまった...なのでちょっと古い80年台の初めの氏のハードボイルド研究、といった感じのエッセイを。
この本はレイス・ウィリアムズからスピレインまでを扱っている。なので評者が気にしていたロスマクの晩年は対象外だ。仕方がないが、それでも「女を探せ」の舞台裏などの情報がある。
本作の目玉みたいなものはいくつかあって、
・アメリカで出た復刻出版を利用して、キャロル・ジョン・デイリイをちゃんと紹介している。多分日本初。
・ハメットを長編ではなく中短編を軸に考察している。当時1/3がまだ訳されていない。
・メロドラマとしての「マルタの鷹」。
・パルプ雑誌の群小作家たちとパルプ雑誌の実態の紹介。
・ラティマーにも一章を費やして、ハメットとチャンドラーをつなぐ作家として考察。
・「大いなる眠り」は道化師マーロウが物語るコメディだ。
などなど、小鷹信光といえば、日本のハードボイルド受容のメインストリームを作った人のわけである。多方面への目配りの良さが素晴らしく、複眼な良さを感じる。バウチャー流の「ハメット・チャンドラー・マクドナルド・スクール」って一種のイデオロギーだ、と小鷹氏も見ているからなんだろうなぁ。
でまあ、評者なんぞ、チャンドラーの浪花節にやや批判的な立場なんだけども、小鷹氏はまあその浪花節の家元なわけで、評者クールすぎたかなと反省しきり。評者的には扉絵に紹介されている「大いなる眠り」の内容をパロディにしたMilt Gross のマンガ「I Won't Say a Word About Raymond Chandler's novel "THE BIG SLEEP"」が実にナイス。昔雑誌でこれを見て大笑いした記憶がある。いやほんとこれ、当たってるからね。今はググったら見つかるよ。

追記:ちょっと調べてみたんだが、ハメットもチャンドラー(戦後は別)も、最初の2冊以外のロスマクも、長編描き下ろしの版元は全部クノップ社である。バウチャーのアレって、クノップ社の宣伝文句みたいなものかもしれないよ。ロスマクの移籍も、ひょっとしてバウチャーが仕掛け人?

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