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ミステリの祭典

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凍った街
87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1985年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点
(2018/06/25 03:18登録)
第36作目。それ以前から兆候はありましたが、87分署物とは思えない文庫の分厚さに書店でびびった記憶があります。おそらくシリーズ最長編でしょう。内容も重量級の外見に恥じません。
 麻薬の売人、ミュージカルダンサー、宝石商と、寒波の襲来を受けたアイソラで起こった連続射殺事件。殺された売人の麻薬商売をそっくりそのまま戴こうとする大男の偽神父と、剃刀使いの太っちょ女の犯罪カップルの描写にかなりの紙数が割かれ、この二人がしっかりと本筋に絡んできます。
 もちろんレギュラー刑事たちの描写も健在。いきなり刑事部屋でお産が始まるのが笑えます。他にもキャレラ刑事と聾唖の愛妻テディ、前回の痛手から癒えないクリングと、体当たり捜査官アイリーン・バークのぎごちない恋愛模様など見せ場も不足無し。
 しかしアイリーンの囮捜査はあくまでも脇筋。今回は犯人側があの手この手を用意しています。前例のない長さだけに中盤は少々ダレ気味ですが、終盤の釣瓶打ちの展開は流石。タイトルの"ICE"もアイソラを襲った寒波→コカイン→宝石→ミュージカルの裏商売と様々に変化しながら、最後に本来の意味に戻ってくるところが見事です。
 本筋の事件をこれまでになく充実させた雄編。満足度はかなりのものです。

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