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ミステリの祭典

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今夜、君に殺されたとしても

作家 瀬川コウ
出版日2018年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 人並由真
(2018/06/23 15:37登録)
(ネタバレなし)
 現場に凶器と直接関係ない、紐と鏡を残していく連続殺人事件が発生。「僕」こと両親と死別した高校生、橘終(たちばな おわり)には、双子の妹である女子高校生・乙黒アザミがいたが、彼女こそはこの連続殺人事件の容疑者であった。妹を愛し、そして彼女の心の闇を知る終は、さらに事件のなかに踏み入っていくが。

 人気青春ミステリ「謎好き乙女シリーズ」の作者によるノンシリーズ編。評者は「謎好き」はシリーズ2冊まで読み、そのミステリ的なセンス、そして男子主人公とヒロインの距離感に結構新鮮な魅力と手応えを感じていた(←なんかエラそうですな。気にしないでください)。
 それでそっちのシリーズはすでに完結しているので先にその残り分を読めばいいのだが、あの作者の完全新規の新作というのはどんなだろと思い、いち早く本書の方を手に取った。まあそんな次第である(笑)。

 で、感想は、うーん……とても瀬川作品らしいんだけど、その個性を今回はこういう形で出しちゃったのかなあ、という印象。
 ミステリとしては二人の主人公(兄妹)の関係性の謎とその軌跡を追う一方で、一種の入れ子構造的に複数の事件と謎めいたものが設けられており、個人的にはその二つ目の真相と事態の成り行きはなかなか面白かった。
 ただし、ヒロイン・アザミの切なくて哀しいキャラクターを語るために、終盤で評者的にはとても許せない描写が出てきたので大幅に減点。アザミのぎりぎりの内面を描くにしても<こんな作劇>は少し安易に感じる。もっとやりようはあるよね。ここであんまり詳しくは申せませんが。

 ちなみに物語の後半から登場し、事件の狂言回しというか観測者的な役回りを務める美少女高校生探偵の神楽果礎(かぐらかそ)。「腹黒」を自認するその厨二的なセリフ廻しにコミックチックな魅力があり、次回はこの子をもっとメインポジションに据えた作品を読みたいですな。まあ本作は講談社タイガ文庫のレーベルだから、今後のそういう路線も考えているんだろうけど。
(あー、そんときは本書は、神楽果礎シリーズの第一弾になっちゃうんだな。)

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