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ミステリの祭典

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白い家の少女

作家 レアード・コーニグ
出版日1977年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2024/03/17 06:03登録)
(ネタバレなし)
 ニューヨークに近い、ロングアイランドの田舎町。「島」と呼ばれるその地域にある白い家、かつてウィルスン家の住居で、町から離れた屋敷に、英国から詩人のレスリー・A・ジェイコブス、そしてその娘で今は13歳になる少女リンが越してきた。親子に借家の世話をしたのは、土地の不動産屋の老女コーラ・ハレットだったが、その年のハロウィンの夜、ジェイコブス家を、コーラの息子で妻子持ちの男性フランクが訪問した。物語はそこから始まる。

 1974年のアメリカ作品。
 巻末の訳者(加島祥造)の解説によると、作者コーニグはもともと演劇・映画畑の劇作家で、単独の小説は本書が初とのこと(合作の長編がこれ以前に一冊あるが、未訳)。
 
 本サイトに数年前まで参加していたミステリファン仲間の「雪」さんが登録だけしてそのまま来なくなってしまった(とても残念)ため、何年も宙ぶらりん状態になっていた一冊で、当人がしばらく参加されないのを惜しみつつ、先にレビュー(感想)を書かせてもらうことにした。
 
 ちなみにジョディ・フォスター(映画『羊たちの沈黙』やら『ペーパー・ムーン(TVシリーズ版)』やら)の少女時代の主演映画の原作ということはもちろん知っているし、そもそもこの原作小説も日本での封切(77年7月)に合わせてその少し前に翻訳刊行されたものだが、評者は映画の方はまだ観たことはない。
 それでなんとなく、映画の宣伝物(ポスターやら映画誌のグラビアやら)を目にして、美少女ジョディ・フォスターの演じる主人公のビジュアルの雰囲気から魔性的なキャラクターを連想し、映画も小説もその手のダーク系ミステリロマン、今で言うイヤミスに近い? かと予想していた。
 
 結果として小説の内容は当たらずとも遠からず、いや遠からずなれど、そういうものとも言い切れない……であったが、いずれにしろ、重い・暗い・シンドいとかその手のストレスは存外に少なく、数時間でいっきに読了できるサスペンス作品であった。まあ物理的にも、本文は二段組ながら、紙幅はハードカバーで200ページにも満たない、短めの作品だったのだが。
(割り切った見方をするなら、アルレーの諸作あたりに結構近い量感と質感であった。)

 前述の通りに作者が劇作家のせいか、ストーリーを淀みなく進ませる勢いはかなり重視され、作中のイベントは続発。登場人物の頭数も少なく、その意味でもストレスを感じさせないまま、グイグイと読者を引っ張っていく。
 ただし一方でその少な目の登場人物にはそれぞれ相応の陰影があるキャラクター描写がなされており、印象に残る場面やセリフも少なくはない。特に……(中略)。
 
 最後まで一息に通読して、なんだあんまり構えて読むこともなかったな、と良くも悪くも実感。
 トータルとしては、佳作~秀作……よりはもうちょっとだけ、気持ち評価したい、といったところ。
 2020年代のいま、文庫で復刊してもいいんじゃないか、とも思うけどね。映画が高画質の映像で新規ソフト化とかされるような機会に、新潮文庫に入れてくれれば、とも思う。関係者の方は、ちょっと一考を願いたい。 

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