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ミステリの祭典

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SS-GB

作家 レン・デイトン
出版日1980年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2018/06/22 20:42登録)
 ディックの「高い城の男」同様、第二次大戦で「ナチスドイツが勝利した」架空世界が舞台の警察小説+ポリティカル・フィクション。ただしこちらは未だ戦争が継続中で、「あしか作戦」成功によりナチスがイギリスを占領したのみの段階なのがミソです。
 早くも主導権を巡って対立を続けるドイツ国防軍とナチス系SS、警察権を掌握する老練幹部とドイツ本国から送り込まれたエリート幹部、両者の勧誘を受けながら黙々と原爆設計図に絡む科学者射殺事件を追う、主人公となるロンドン警視庁の腕利き警視、敗れはしたもののアメリカを本格的に参戦させての逆転を狙う旧大英帝国指導部。これにレジスタンスが加わり、さらにアメリカ人女性記者との恋愛が描かれます。
 本国では2017年にBBC OneによりTVドラマ放映され、人気が再燃しているこの作品、「もしもドイツが勝っていたらどうなったか?」というIFが、実在の建造物や観光名所、軍人・一般人の扱い、社会の変遷などを通して精緻に描写されているのは素晴らしい。
 ただしロンドン塔からジョージ6世を脱出させるクライマックスシーン及びその後の戦闘の扱いは、肩透かしというか皮肉極まりないですね。あまりにあんまりなのでドラマでは若干変更されたみたいですが。
 序盤からわりと大胆に伏線は張ってありますが、決着はカタルシスとは程遠い展開です。細部が良いだけに勘所で盛り上がりに欠けたのが惜しいです。

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