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ミステリの祭典

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探偵フレディの数学事件ファイル

作家 ジェイムズ・D・スタイン
出版日2017年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2018/06/19 09:30登録)
主人公は結婚生活が破綻した私立探偵フレディ。妻リサと別居後、ニューヨークからロサンゼルスへと移り住み、スポーツ・ベッティング(賭け)好きの家主ピートと暮らし始める。妻への複雑な思いを抱えつつ、依頼された事件に取り組んだり、友人の金儲けや恋愛の相談に関わったりの日々を送る。
ピートはフレディの行動を冷静に見つめ、折に触れて有効な示唆を与える。探偵とその相棒が織り成す、ありがちな物語の展開とみせて、一見さえないピートの助言が意外にも数学の深い素養に基づいている点が、数学の教材として使うことも意識して書かれたこの連作短編小説の特徴だ。
フレディは到着時刻に遅れ、友人の淡い恋の行方を危うくした。その原因は往路で時速40マイル、復路を時速20マイルで走った時の平均速度を時速30マイルと誤解したため、とピートは指摘する。また統計学での正規分布の考え方に基づき、あるバスケットボール選手のフリースローの成功回数が異常に少ないと判断したピートは、フレディに選手の身辺調査を勧め、事件は解決する。
話の展開を妨げないよう、数学的な説明は全体の3分の1を占める付録に譲りつつ、割合や複利計算などのうっかり間違えがちな問題や、未知の出来事への効果的な対処の仕方を教える確率、統計、ゲーム理論に基づく謎解きを全14話で語っていく。
付録の部分の記述は数学の教科書風。小学校高学年から高校生程度の知識で理解でき、学校で習っていれば読み通すのにさほど困難は無い。しかし、その知識が「数学のための数学」にとどまっていれば、ピートのような謎解きは出来ないことにも次第に気付かされる。
数学を日常生活に役に立つ形で自分のものにするには、試験で高得点を取るよりも数倍深い理解が必要だ。ピートは賭けという趣味を通じ、実践的な数学の実力を身に付けたに違いない。話の運びは軽妙で楽しめるが、著者が読者に求めている数学的な知の水準は実は相当高い。

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