(2018/06/03 22:27登録)
(ネタバレなしです) イメージチェンジを狙ったか「そのとき一発!」(1965年)、「ダブルで二発!」(1966年)と(私は未読ですが)いかにも通俗サスペンス風な作品を発表した島久平(1911-1983)が続いて1967年に発表した伝法義太郎シリーズ第3作(そして多分シリーズ最終作)の本書は何とも言い難い怪作です。まずサブタイトルが凄いです、「女魔ドコ」。魔女ではありません、女魔です。そしてやはりというか作中で「ドコから来たのか」と駄洒落が炸裂(笑)、でもユーモアミステリーではありませんけど。しかしこのドコ、とんでもない女性です。登場人物から化け物呼ばわりされる面相、大の男の首や腕の骨を片手で折ってしまう怪力、そして何度も不可能状況下で出現と消失を繰り返して伝法や警察を翻弄、まさに女魔です。夜の世界の組織同士の対決を描いたスリラー系ミステリーですが、「第一の密室」、「第二の密室」、「第三の密室」という章があるように本格派推理小説の要素もあり、結構丁寧に推理しています。「十字架の前」の章で明かされるトリックはまじめな読者が怒りかねないようなとんでもない代物ですが、その一方で心情の描写や舞台となる神戸の風景描写など印象に残る場面もあります。読者を選ぶ作品ではありますが決していい加減に書かれた作品ではないと擁護しておきます。
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