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ミステリの祭典

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触法少女

作家 ヒキタクニオ
出版日2015年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2018/05/27 22:34登録)
小学四年生の時に母親に捨てられた深津九子は、児童養護施設から中学校に通っていた。十三歳の九子は担任の欲望を利用し支配し、クラスメイトの男子西野を下僕化、同級生の井村里実からは崇められていた。
或る日、母親の瑠美子の消息を知るチャンスが訪れ、そこから九子のそれまで抑えていた感情が溢れだし、運命が動き出す。

ジャンルを登録する時に正直迷いました。一応本格にしましたが、プロット的にはクライムノベルのようでもあり、触法少年という概念が根本にあるので社会派でも通用しそうだし、全体から受ける印象はサスペンスに近いものがあります。そんなジャンルミックスの要素を強く持ったこの作品は、子供に対する親の虐待、刑法第四十一条問題、事細かに記された毒物生成方法などの危険な要素を孕んだ犯罪小説と言えるかもしれません。

九子の計画はやはり子供らしく、アリバイトリックや指紋の問題などやり口が稚拙で、警察の手に掛かれば簡単に見破られてしまいます。その辺りは、まあ作者の計算通りなんでしょうけれど、毒物を作る過程だけは専門知識を駆使しており、リアリティがあります。
前半はやや冗長な感じを受けますが、事件後はなかなか読ませます。全般的に気分良く読めるとは言い難いですが、飽きることはないと思います。後半、二捻りあり、意表を突かれます。ここはある海外の名作を彷彿とさせ、なるほどと深く肯かされます。それまでの伏線も効いていますね。
なんとも言えない独特の世界観を持った作品であるのは間違いないですし、ヒキタクニオの本領を発揮していると言っても言い過ぎではないでしょう。

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