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ミステリの祭典

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予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー

作家 ジョン・コリア
出版日2013年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2018/04/28 03:31登録)
(ネタバレなし)
収録短篇(一部ショートショート)は、全部で以下の16編。

「またのお越しを」植草昌実訳
「ミッドナイト・ブルー」田口俊樹訳
「黒い犬」植草昌実訳
「不信」植草昌実訳
「よからぬ閃き」植草昌実訳
「大いなる可能性」田村義進訳
「つい先ほど、すぐそばで」植草昌実訳
「完全犯罪」小鷹信光訳
「ボタンの謎」植草昌実訳
「メアリー」田村義進訳
「眠れる美女」山本光伸訳
「多言無用」伊藤典夫訳
「蛙のプリンス」田口俊樹訳
「木鼠の目は輝く」植草昌実訳
「恋人たちの夜」伊藤典夫訳
「夜、青春、パリそして月」伊藤典夫訳

 以前に読んだことのある懐かしい作品から、本書が初訳で当然初めて読む作品までバラエティに富んだ内容。各編の前で口上を述べて読者を饗応しようとする編者・井上雅彦のコメントや、メイン翻訳者・植草昌実の丁寧な巻末の解説もふくめて、ほぼ一冊丸々、とても楽しかった。
 いわゆる<異色作家>勢の中ではコリアは、比較的くせのない方だと思うが、さすがに話術のうまさと凝縮された物語性はいかにも短編小説を読むトキメキを存分に味合わせてくれる(1~2編、切れ味の鈍い感のものもあるが、そのへんは愛嬌)。

 とはいえ大昔の青春時代に『炎の中の絵』を初めて読んだときほどの鮮烈なインパクトが感じられなかったのは、すでにコリアの作風がそれなりにわかっているからか。あるいは読み手としてのこちらがスレて、あるいは枯れてしまっているからか(涙)。
 実際、以前にミステリマガジンで読んだ『メアリー』や『眠れる美女』がやっぱり筆頭格に面白いんだよ(しかし巻末の書誌を参照すると『メアリー』の日本語初訳は1981年? なんかもっとさらに昔の60~70年代くらいのHMMと思ってた)。
 
 この叢書の「予期せぬ結末」路線はこのあとに続いたボーモントもブロックも先に読んじゃったけれど、それぞれ味わいがあって良かったな。かつてのミステリマガジンがこういうものを頻繁に載せていた良い時代を思い出す(真鍋イラストや畑野イラストがまたステキだった)。
 
 んでもって「予期せぬ結末」は、叢書としてはもちろん早川の「異色作家短篇集」路線の正統派後継者だった訳だけれど、このシリーズタイトルだったらスレッサーやリッチー、あるいはウールリッチさえも入れられたよね。3冊で中座してしまったのがとても残念。この手の個人作家発掘短編集で、いつかどっかでC・B・ギルフォードがぜひぜひ読みたいわ。

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