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ミステリの祭典

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岡本綺堂 怪談選集
結城信孝編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2009年07月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 小原庄助
(2018/04/27 09:26登録)
「怪談」という言葉からイメージするおどろおどろしさは一切ない。文章は平易で簡潔。恨みつらみを言い募る幽霊も登場せず、残酷なことも起こらない。「怪談会で参加者が語った話」という体で、不可解な出来事とそれに慄く人々が描かれるだけだ。怪現象らしきことも一つ一つを精査すれば「見間違い」「気のせい」「夢」と考えるのが妥当だ。物語はすべて「偶然の連鎖」で済ませるのが理想的だろう。
そう分かっていても登場人物は恐れてしまう。前後のつじつまを合わせて「何らかの意思」「因果関係」を読み解き「怖いことが起こっている」と解釈してしまうのだ。そして読者もつられて恐怖してしまう。
収録作では「妖婆」が最も印象的だ。ある雪の日、道端に座り込む老婆を目撃した若侍に不幸が訪れる。それだけの話だ。老婆を見たという証言だけがあって実在するかは定かでない。不幸と関係するのかもわからない。ただ読み終わってしばらくの間、まぶたの裏に雪を被った老婆の姿が浮かんで消えない。

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