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ミステリの祭典

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ハイ-ライズ

作家 J・G・バラード
出版日1980年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2018/04/19 09:00登録)
先端テクノロジーで駆動する40階建て、全千戸の高層集合住宅が舞台。
独立した社会のような機能と構造を備えたこのマンションでは、階ごとに住民は階層分化し、その点でも社会の縮図を成している。下層階には低所得の者が、中層階には中間層、上層階には富裕層が暮らしている。
近未来社会というより、今日の現実を描いているかのような本作では、ある出来事をきっかけにして、日頃から住民たちの間に渦巻いていた嫉妬や軽蔑が露になり、次第に壊滅状況へと陥っていく。
恐ろしいのは、その破滅が登場人物によって極めて冷静に語られていることだ。混乱の果てに、住民たちはそれぞれのエゴをむき出しにし、野蛮な原始状態まで退行していくのだが、おのおの異常な行動をとりながら、自分は事態を冷静に把握していると思い込んでいる。
ここに描かれているのは、野蛮よりもずっとたちが悪い邪悪な知性に裏付けられた無機質な衝動だ。ある登場人物は、この現象を現代人の精神病理が極まった先の「進歩」だと考えるが、他者と共有できない「自由」は結局、地獄にしかなり得ない。

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