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ミステリの祭典

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蒸発

作家 デイヴィッド・イーリイ
出版日1969年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2018/04/15 21:06登録)
銀行の上級幹部の主人公は、死んだと聞いている友人からの電話に耳を疑った...それは、地位も家族も捨て、別人として新しい人生を歩むことへの誘いだった。社会的成功とは裏腹に、満たされない思いを抱いていた主人公は、その誘いに乗ってしまった。至れり尽くせりで「会社」が用意してくれた新しい自分は、別天地カリフォルニアでの画家としての生活だった。そこは同じような「転生者」たちの村なのだが、「転生者」たちが相互に監視しあっているように主人公は感じた....
と、こういう話、当然主人公は転生に「失敗」する。読んでて「会社」の「営業」は薄々気がついてくるので、会社を困らせる馬鹿なことばっかりしている主人公への同情の余地も、あまりない。それこそ星新一だったらショートショートで終わらせるのでは?という話なのだが、プロセスをしっかり書き込んであるので、怖い描写はゼロでも、「本当は...」の想像から徐々に怖くなっていくあたりがこの人の芸というものか。

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