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ミステリの祭典

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いなくなった私へ

作家 辻堂ゆめ
出版日2015年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2018/04/01 22:29登録)
巷で人気のシンガーソングライター(ママ)、上条梨乃が意識を取り戻した時、彼女は渋谷らしき繁華街のゴミ捨て場にいた。しかし、道行く人間の誰も自分に気づかない。有名人であるはずの自分になぜ?さらに、彼女は昨夜自宅のマンションから飛び降り自殺をしたことを知る。では私はいったい誰なのか、自分が上条梨乃であることは自分が知っている。それは間違いないはず・・・。
街を彷徨っている時、初めて自分に気づいてくれる青年が現れる。そして、彼女の自殺が原因で命を落とした少年(彼も彼女の正体に気付く)に出会い、彼ら三人は梨乃が自殺したにもかかわらず、どうして生きているのかを探り始める。

このようなストーリーで最も興味を惹かれるのは、やはり生き返りよりも、なぜ誰も梨乃の正体に気づかないのか、そしてなぜ二人だけが彼女だと知ったのか、という点だと思います。しかし、残念ながらこの小説はミステリではなくファンタジーなので、そこに重きは置かれないのです。その謎が解明されたとき、ミステリ読みとしてはがっかりさせられます。多くの方がそんなはずじゃなかったのに、と思うでしょう。
しかし、その他の謎や自然に湧き起る疑問には一応破綻のない解法が与えられるような仕組みにはなっています。ですが、いかんせん冗長気味で、前述の最も肝心の謎が一向に解かれる様子がないのにはいら立ちを隠せません。

長尺のわりにさしたる盛り上がりもなく、どこか漠然とした印象を受けます。これといったサプライズもなければ、ファンタジーらしい壮大さも感じられず、全体的に小ぢんまりと纏まってしまっているような凡庸さが目立ちました。結局最後はいい話で終わっているのもどうかと思いました。

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