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ミステリの祭典

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危険の契約

作家 エリオット・リード
出版日1961年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 クリスティ再読
(2018/03/31 22:34登録)
エリオット・リードはアンブラーの別名義みたいなものだが、ロッダという作家との合作ということもあって、多少テイストが異なる。本作だと主人公は海軍を辞めたあとに、自分でモーター・ランチを所有して船長として雇われ仕事を始めたばかりである。原題の Charter to Danger もチャーター船の話、ということだ。大実業家の秘書を名乗る男にチャーターされてカンヌに持船を回航してきたのだが、打ち合わせのために上陸したのを主人公はすっぽかされて、船に戻ったら、機関士と甥を乗せたまま船が消えていた....雇ったはずの秘書は全く別人で、大実業家もホテルから失踪していたのだった。まもなく主人公の相棒である機関士の死体が漂流するボートの中で見つかった! 大実業家はどうやら誘拐されて主人公の甥と一緒に囚われているらしい。
とまあ、アンブラーというよりも、アンドリュー・ガーヴみたいなノリの話である。良い点は主人公設定で、誘拐事件の道具に使われた船の船長、というわけでどっちか言えば「小説の脇役」みたいなポジションになりがちなキャラをあえて主人公にして、甥の安否と責任感から、積極的に事件に介入することにしている。誘拐も企業合併のウラで進行している株の仕手戦と絡んでいるなど、冒険小説にしては異色なくらいのリアル設定があることだろう。
つるつる読めて、いい点もあるが、標準的なスリラー、といったところ。アンブラー独特のアイロニーみたいなものは窺われない。

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