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ミステリの祭典

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マフィアへの挑戦1
マック・ボラン/別題『マフィアへの挑戦1 戦士起つ』

作家 ドン・ペンドルトン
出版日1973年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2019/05/04 23:06登録)
ヘヴィな作品が続いたので、箸休めに何も考えずに読めるものを。創元推理文庫は70年台に拳銃印でハードバイオレンスのシリーズ物を出してて、プリンス・マルコみたいに結構長く続いたものもある。そのハシリがこの「マフィアへの挑戦(死刑執行人 マック・ボラン)」なんだけども、創元じゃ20冊、ポケミスでも1冊、ハーレクインでも男向きレーベルでかなりの冊数が出てるんだが、本家アメリカじゃハウスネームと化して延々書き継がれて300冊以上出て、「ヒーロー・ペーパーバック」というジャンルになっちゃったらしい。
ベトナム戦争で狙撃の腕で「死刑執行人」の異名を取ったマック・ボラン軍曹は、父が母と弟妹と無理心中したという知らせを受けて帰郷した。生き残った弟から、父の死は自らの借金のカタに妹が売春させられたことにあることを知る...その高利貸はマフィアが経営しているものだった。

どうやら俺は敵を間違えていた。自分の国で、自分の家で、俺が大切にしてものを片っぱしからめちゃめちゃにしている敵があるというのに、何故八〇〇〇マイルも離れた他国の前線を守らなくてはならないのか?

とまあ、なかなかイイところに気がつくわけである。で、

俺は判事ではない。俺は審判だ。死刑執行人なのだ

と悟りを開いちゃう。ヒーロー物だから、警察も市民も実のところ同情的。ランボーみたいなワンマンアーミーとして、ボランは戦争モードでマフィアに宣戦布告して皆殺し、というお話。なのでポイントは厨ニな「ハッタリ」がどこまで利くか?というあたり。トビラにカーライル、ハバード、ニーチェの言葉にさらに「俺は判事でない....」を並べるとか、評伝風のプロローグ、目撃者に語らせるわざとらしい伝聞体、などハッタリの効果が解って書いてるあたりがニヤリとさせる。「銀英伝」とか能條純一とか、あの手の伝説めいた語り口だね。そこらへん上手いものだ。

たしかねえ、この本父親が出張かなんかの読み捨て用途で買って家に持ち帰ったもののような記憶があるよ。個人的には懐かしいが、1冊読んだら評者はお腹いっぱい。
(思うのだが...ネオ・ハードボイルドにあまりベトナム後遺症モノがないのはなぜだろう? ちょっと「一人だけの軍隊」とか取り上げた方がいいのかなあ、なんて思う)

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