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ミステリの祭典

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どうか、天国に届きませんように

作家 長谷川夕
出版日2018年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2018/03/28 22:20登録)
誤解を恐れずに言うならば、乙一を詩的にしてマイルド感を与えたような作風の短編集です。ホラー要素を加味したサスペンスでしょうか。

正直、半分はジャケ買いでした。装画はおそらく『黒い糸』の、冬の細かい雨がそぼ降る都会の片隅に、一人彷徨う青年の姿を描いた情景だと思います。良い味を出しています。その第一話『黒い糸』を読み終えたときは、7点を献上するかもと思いましたが、残念ながら次第にトーンダウンしてしまい、この点数に落ち着きました。
それにしても集英社オレンジ文庫から刊行された本作品は、ラノベレーベルにしては怖いです。表層的なものではなく、壊れていく人間の本質的な怖さがじわじわと迫ってくるようで、背筋が寒くなります。
読みやすいので引っかかりませんが、よくよく考えればある人物が狂気に取り込まれていたり、現実的にはあり得ない現象をさも当たり前のように描いている辺りは、普通のホラー作家ではまず想起しないであろう奇想が見られます。

最終話でそれまでの二作を裏側から捉えられていますが、これは若干蛇足だったように思えます。描かれる視点が異なるだけで、世界が反転するわけでも意外な事実が明らかになるわけでもありません。
惜しかったですね、すべてが第一話レベルだったら称賛を送るのに吝かではなかったでしょう。

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