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ミステリの祭典

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チェルシー連続殺人事件
旧邦題『チェルシー連続殺人』

作家 ライオネル・デヴィッドスン
出版日1979年10月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 クリスティ再読
(2018/03/11 17:27登録)
ライオネル・デヴィッドソンというと、CWAゴールドダガーを3回も受賞した大家といっていい作家なのだけど、日本での人気は全然出なかった人である。日本とイギリスのセンスの違いみたいなものを、いつも実感するエピソードである。
で、本作も受賞作で3回のうち最後の受賞。それまでがスパイ・冒険小説のくくりになる作品だったのだが、これはミッシング・リンクもの風な連続殺人を、捜査を指揮する警視の視点で追う作品。被害者がイギリスの詩人と同じイニシャルを持っていて、犯行を示唆する詩を引用した手紙が届く、というのがポイント。某連続殺人事件モノにちょっと近いトリックもある。
とはいえ、ポイントは当時最新のファッションと芸術の街だったチェルシーが舞台だ、ということ。主要人物として、アングラ映画を撮影するグループ(うち一人はアフロヘアの黒人)が登場するし、楽器の修復業者はドイツ人で、ジーンズショップの経営者は華僑、その黒人はもちろんインテリで、アルバイト先のレストランでは見た目が黒人でも丁寧かつ完璧なフランス語で、名物給仕だ...というあたり、丁寧なキャラ描写が命。アングラ映画はどうもケネス・アンガーっぽいものみたいだな。
というわけで、ミステリ色よりも風俗小説としての面白みが勝る。まあ、前の受賞作もデテールの書き込み力が印象的だから、まあこういう作風、ということか。ハッタリ感は薄いから、日本じゃ受けづらいのも仕方がないかなあ。

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