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ミステリの祭典

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呉漢

作家 宮城谷昌光
出版日2017年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2018/02/25 16:05登録)
光武帝に仕えた呉漢の生涯を描いた作品。後漢王朝を開いた光武帝については、これを主人公にした「草原の風」がある。併せて読めば、激動の時代を、より深く知ることが出来るだろう。
貧しい農民の呉漢は、己の殻に閉じこもって生きていた。しかし彼は、他人の言葉を心にとどめ、自分なりに理解する力を持っている。幾人かとの出会いを経て、存在を認められ、役人になった呉漢。訳あって流浪の身になっても、人々の良き縁を結んでいく。そして新王朝が倒れ、群雄割拠になった時代の中で、劉秀(光武帝)に仕えると、武将として大陸を駆けるのだった。
タイトルからも分かるように、本書の読みどころは、主人公の呉漢である。身分もなければ学もない。でも彼は、他人の言葉を真摯に受け入れる。好意を寄せる人だけでなく、自分を憎む人でもだ。心を澄ますことが出来れば、世界は教えに満ちているのである。そんな呉漢が、時代に流されながら、成長していく。呉漢の師や、彼を慕う郵解、角斗、魏祥、など周囲の人々との関係も爽やか。
相次ぐ戦に興奮する後半もいいが、真っすぐに伸び行く呉漢を見つめた前半の読み味は、格別であった。

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