(2018/02/12 22:14登録)
(ネタバレなしです) 英国の女性作家メアリー・スチュアート(1916-2014)は1955年に作家デビューして約40年間活躍しましたが書かれた作品は約20作と多くはありません。しかしロマンチック・サスペンスと歴史ファンタジーの2つのジャンルにおいて重要作家と評価されているようです。ミステリーに絞れば前者ということになりますが1990年にCWA(英国推理作家協会)が人気投票した際にはロマンチック・サスペンス部門の上位10作でスチュアート作品が3作も選ばれました。さて本書は1956年発表の長編第2作であり、舞台はスコットランドのスカイ島です(トラベルミステリー要素もスチュアートの特徴です)。既に地元の少女が何者かに殺されている設定ではありますが、主人公がスカイ島に上陸してからの序盤の展開は少しもたつき気味です。しかし旅行客が登山に出かけたまま戻らない事件が起きてからサスペンスが増していきます。暴雨風、夜の暗闇、霧といった自然現象の使い分けも巧妙です。犯人を示す手掛かりもちゃんと用意されていてユニークな動機(単なる殺人願望ではない)が印象的ですが、やはり本格派推理小説よりはサスペンス小説として評価されるべき作品でしょう。
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