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ミステリの祭典

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そして、君のいない九月がくる

作家 天沢夏月
出版日2015年10月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2018/01/17 22:03登録)
その夏、恵太が死んだ。
双町高校のクラスメイトで、親交の深かった美穂、大輝、舜、莉乃たちはショックから立ち直れない夏休みを送っていた。そんなある日、美穂の前にケイと名乗る恵太そっくりの少年が現れる。彼はどうやらドッペルゲンガーのようで、「僕が死んだ場所まで来てほしい」と頼まれ、美穂ら四人は恵太の足跡を辿るひと夏の旅に出る。

私は家出をしたことがありません。作者もあとがきで同じことを語っています。そして自分ができなかった家出というものを出発点として書いてみようと思い立ったのがこの小説だそうです。

恵太の死は警察によって事故死として処理されますが、なぜ烏蝶山などという辺鄙な場所で転落死したのか、その謎が根底には流れています。ですが、それだけでこの物語を引っ張るのはやはり無理があったようで、真面目に読んでいたつもりですが、どうも頭にストレートに入ってこない感じがしました。文章は無難ですが、心に突き刺さるものが全然足りないとも思いました。
道中、彼ら四人の恵太との思い出が語られますが、どれも鬱屈しており爽やかな青春小説と言う印象には程遠いです。嫉妬、後悔、恋心など、彼らの関係は相当歪んでいます。
ただ、ラストの仕掛けはやや意表を突かれました。ミステリ的な伏線も欲しかったところですが、そこまで本格ではなかったようです。一応ミステリと銘打ってはいますが、やはり突き詰めれば青春小説なんでしょうね。
エピローグは柔らかい余韻を残すものとなっていたのが救いでした。それにしても二年で16版重ねているのだから、結構な人気作品のようですが、私には残念ながらその良さがイマイチ理解できませんでした。

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