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ミステリの祭典

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覆面作家

作家 大沢在昌
出版日2017年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2018/03/15 09:18登録)
限りなく作者を彷彿とさせる作家の「私」を主人公にした短編集で、8編が収録されている。
なかでもいいのは覆面作家の話と青春時代の親友との挿話が微妙に交錯していく表題作と、自分に自信が無くて一歩踏み出せなかった淡き恋愛を回想する「イパネマの娘」だろう。ともに謎があり、それが次第に解かれていくのだが、筆致は軽妙なのに郷愁がにじみ、行間からは詩情がこぼれて、最後には何とも言えない感慨を覚える。
2編以外にも殺し屋の都市伝説を調べる「確認」はオチが不気味だし、一技術者の死を探る「不適切な排除」は意外な真相に胸躍るし、ありえない賭けの顛末「カモ」と遺失物をめぐる推理「大金」はともに予想外の真相を明らかにしてニヤリとする。
さりげない諧謔を交えた洒脱な作風が魅力的な短編集であり、まさに円熟の境地。

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