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ミステリの祭典

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乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益

作家 佐々木功
出版日2017年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2017/12/29 08:51登録)
織田信長配下の武将でありながら、ほとんど主役になったことのない、滝川一益の生涯を描き切った戦国小説。
甲賀の若き忍びの滝川久助は、ある陰謀に巻き込まれたのを機に、里から出奔した。名を一益と改めた彼は諸国を放浪し、やがて織田信長と出会う。自身の鬱屈した心を託すに値する、器を持つ男だと確信した一益。信長に仕え、忍びや射撃の腕だけでなく、武将としての力も示し、乱世を駆け抜けるのであった。
滝川一益の出目は諸説ある。その中でも有名なのが、甲賀の忍びだというものだ。作者はこの説を採り、豊かな物語に仕立てた。甲賀を捨てるまでの経緯や、有名な忍びの加藤段蔵との死闘など、忍者小説として楽しむことが出来るのだ。
その一方で、戦国小説の面白さも抜群である。信長と共に未来を切り開こうとしながら、本能寺の変以後、時代の流れの中に埋もれていく。そんな武将としての一益の姿も、雄々しく描かれている。二つの読み味を、見事に合体させた手腕を、大いに称揚したい。

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