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ミステリの祭典

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乱歩城 人間椅子の国

作家 黒史郎
出版日2017年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2017/11/21 22:14登録)
少年コバヤシは今日もアパート椋鹿館の屋根裏に裸で這い回り、住人たちの言動を覗き見ていた。或る日、不在の一人を除いて全ての住人が殺さているのを発見する(『屋根裏にも散歩者』より)。

江戸川乱歩の世界を大胆不敵にアレンジした、謎と狂気の乱舞する連作短編集。
椋鹿館の主は変態探偵の明智傷、若き女性です。先日書評した『人間椅子 乱歩奇譚』の高校生名探偵とは全くの別人です。コバヤシという少年も勿論中学生で明智の助手だった人物とは別人です。のちに少年は《屋根裏》と呼ばれるようになり、明智傷の助手となりますが、他にも老若男女の助手《目羅博士》《パノラマ島》《白昼夢》がいます。
明智傷は奇妙な殺人事件ばかりを選り、助手と共に解決に結び付けていきますが、これらを本格と考えると裏切られます。ですので、ここに収録されている短編は幻想が支配する妖しくも怪しい物語と捉えるのが正しいと思います。但し、ストーリー性はほとんどなきに等しく、それぞれの登場人物の産んだ奇妙奇天烈なホラ話といった趣が強いです。だからと言って、消化不良に終わるのかというとそうではなく、キッチリとオチはつきます。意外性はありませんが、人間の変態性を暴く明智のサディストのような探偵ぶりに、これまでにない強烈な読書体験をすることになります。
たまには変格探偵小説をという方にお勧めです。

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