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ミステリの祭典

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心霊は乱れ飛ぶ

作家 九鬼紫郎
出版日1956年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 nukkam
(2017/11/15 08:59登録)
(ネタバレなしです) 1956年発表の本格派推理小説で、東方新書版の巻末の作者コメントでは「初の長編本格派作品」のように紹介されています。この作者には九鬼澹(くきたん)名義の「動く屍体」(1950年)という作品もあるのですが短めなので長編作品という意識がなかったのかもしれません。このコメントで作者は本格派への志向を前面に出し、「チャンドラーやガードナーのハードボイルド探偵小説から私の学ぶものはない」とまで宣言してますが後年にはハードボイルド小説を発表するようになるのですけどね(笑)。前首相が拘置所にいる心霊術師の予言通りに死んでしまうという怪事件で本書は幕開けします。正体不明の殺人鬼「影」の仕業ではという疑惑も生じて謎は混迷の度合いを増していきます。警察の活躍はようやく終盤になってからで、それまでは怪しげな容疑者が他の容疑者を怪しいと主張するなど誰の言うことを信じればいいのかわからない状況が続きます。トリックには強引過ぎではと思えるのもありますがプロットはそれなりに楽しめました。文章も意外と古臭くなくて読みやすいです。

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