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ミステリの祭典

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有楽斎の戦

作家 天野純希
出版日2017年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2017/11/11 10:27登録)
本書には短編6作が収録されている。そのうちの3作で主人公を務めのが織田有楽斎。織田信長の弟でありながら、戦が嫌いで、茶の湯を愛する。戦国武人から臆病者として、侮られている人間だ。
その有楽斎が、本能寺の変、関ケ原の戦い、大阪の陣という戦国の転換点で、ぶざまな姿を見せ続ける。でも、それがいい。荒々しい戦国時代になじむことが出来なかった有楽斎が、最後に得た希望から、人の生きる意味が見えてくるのだ。
さらに有楽斎の人生に重ね合わせるように、本能寺の変に遭遇した博多商人の島井宗室、関ケ原の戦いを引っかき回す小早川秀秋、大阪の陣で失意にまみれる松平忠信の物語が収録されている。
これにより戦国時代が、立体的に感じられるようになっているのだ。各作品の面白さは当然として、ユニークな構成が、本書の価値をより高めているのである。

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