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ミステリの祭典

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弁護士探偵物語 天使の分け前
弁護士探偵「私」

作家 法坂一広
出版日2012年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 小原庄助
(2017/11/06 12:05登録)
もしフィリップ・マーロウが日本の弁護士だったら・・・と表現するならそんな小説。
主人公の「私」は福岡県の弁護士。被告人の弁護を担当した母子殺害事件をめぐって、お役所体質の裁判所や検察と真っ向から衝突。司法に見切りをつけた「私」は逆境を乗り越え、事件の裏に隠された巨悪を暴いていく。
全編が主人公のマーロウ風の語りで進行。ブルースをBGMにウイスキーを飲み、危機的な場面でもシニカルに自嘲してみせる。美人に対しては、挑発的なせりふで愛を表現。ただし、マーロウほどの達観した印象はなく、やや意固地に感じられるときもある。そこに人間くさい愛嬌を見出すか、鼻につく自己愛だと受け止めるかが、好き嫌いの分かれ目でしょう。
本作の刑事司法のリアルな内幕描写には、現場に身を置く弁護士ならではの説得力がある。作品の底流に作者の切実な問題意識があるのでしょう。シニカルな語り口は、正義の代弁者然となってしまうことを避けようとした、作者の照れ隠しとも取れる。

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