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ミステリの祭典

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黒川温泉殺人事件
温泉殺人事件シリーズ

作家 吉村達也
出版日2010年07月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点
(2022/06/28 20:51登録)
吉村達也ですから、いわゆるトラベル・ミステリは期待していなかったのですが、阿蘇から黒川温泉までタクシーで行くシーンが出てきます。そこで運転手が阿蘇について長々としゃべるのは、観光ではない乗客の戸部親子にとってほどではなくても、少々煩わしく感じました。まあ、旅情系が得意な深谷忠記のようなわけにはいかないのは、しかたないでしょうか。
女を殺したらしいのに、はっきりした記憶がないという冒頭の謎は、かなり魅力的ではありますが、それに対する答は、ずいぶんなご都合主義です。殺した相手の名前さえ憶えていない、推測もできないという記憶欠落に対する解答としては、あまりに安易で不自然なのです。動機につながる、あるアイディアは伏線もたっぷり張ってあり悪くないのですが。全体的な仕掛けからすると、志垣警部のシリーズより事件関係者を主役としたサスペンスにしたほうがよかったのではないかと思えます。

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