白の祝宴 |
---|
作家 | 森谷明子 |
---|---|
出版日 | 2011年03月 |
平均点 | 8.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 8点 | 小原庄助 | |
(2017/10/25 11:30登録) 紫式部を探偵役にした時代ミステリ。 帝の寵妃・中谷彰子は、出産を記録するため女房たちに日記を書くことを命じ、まとめ役に香子(紫式部)を指名した。若君誕生の日、定子皇后の忘れ形見・敦康親王の屋敷に賊が侵入、手傷を負った賊は、彰子が宿下がりしていた土御門邸に逃げ込むものの、忽然と姿を消してしまう。 賊はただの物取りなのか、それとも彰子の子供を皇太子にするために、敦康の命を狙ったのか、香子は捜査を開始するが、今度は一条院内裏で呪符が見つかってしまう。 産婦に使える女房は白の衣装を着ていたなど、作中には平安朝の風俗も丹念に描かれているが、それが謎解きの鍵にもなっているので、緻密な構成には驚かされるでしょう。 女の嫉妬と欲望が渦巻く後官が舞台だけに、事件を複雑怪奇にする人間関係は”大奥もの”のような楽しさもある。盗賊消失の謎と呪符を置いた犯人が浮かび上がるにつれ、なぜ「紫式部日記」が書かれたのかという歴史の謎、文学の謎も明らかになるので、王朝文学が好きな人も満足できるように思える。 |