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ミステリの祭典

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ブラッド/孤独な反撃

作家 デイヴィッド・マレル
出版日2002年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2017/10/23 23:58登録)
これは喪った物を取り戻そうとして奪った男と、奪われた物を取り戻そうとして奮闘し、奪還したが、喪った物までは取り戻せなかった男たちの、哀しき兄弟の話だ。

神隠しに遭っていた弟が数十年ぶりに出逢ったら復讐者となっていた。この設定だけでも衝撃的なのに、マレルはさらに物語にツイストを仕掛ける。

ただ私が本当に恐ろしく感じたのは、ブラッドと数十年ぶりに再会したピーティの様子が本当に嬉しそうで楽しそうに見えたことだった。兄とその家族との団欒を満喫しているかのように振る舞いながら、心の底では全てを奪おうと考えていたことが実に恐ろしく感じた。この前段のブラッド一家とピーティとの和やかな交流の様子がピーティの心の暗黒の深さを助長しているように思える。

しかしこのような話を読むと、子供の頃の何気ない弟への仕打ちが起こした代償の重さを感じてしまう。物語の結末の苦さも含めて、こんなことが起こり得るアメリカの治安の悪さが恐ろしく感じる物語だった。

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