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ミステリの祭典

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ホプキンズの夜
刑事ロイド・ホプキンズ

作家 ジェイムズ・エルロイ
出版日1987年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 tider-tiger
(2019/08/14 17:44登録)
~変装が得意なロス市警のハーゾグが失踪した。ホプキンズの捜査によりハーゾグが六人の警官の言動をさぐっていたことが判明する。その六人の中にはかくいう「ロイド・ホプキンズ」も含まれている。この頃小さな酒屋で三名もの犠牲者を出す強盗事件が発生する。ホプキンズはこの二つの事件には繋がりがあるのではないかと考えはじめる。~

1984年アメリカ。原題は『Because the Night』ブルース・スプリングスティーンに同タイトルの曲があるが関係は不明。
『血まみれの月』に続くロイド・ホプキンズシリーズの二作目。エルロイというと母親の事件が取り沙汰されがちだが、本シリーズに母親の翳は見えない。むしろ父子関係に焦点が当てられている。
ロイド・ホプキンズはIQ170とかいう設定になっているが、これはあまり意味のない設定だった。頭の良さよりも頭のおかしさでキャラが立っている。この人物はエルロイという人間を露悪的かつ誇張して体現しているような気がする。

物語は前作『血まみれの月』と同じく異常心理系ではあるが、こちらの方がストーリー性に富み、よくまとまっている。『血まみれの月』は犯人が人を殺すまでの心理的な過程が細密に描かれるも、話がいささか単調で、犯行も非常に杜撰で、ホプキンズは根拠のない思い込みで動いている。正直なところ瑕疵が目立った。
今作『ホプキンズの夜』はツカミはいいし、ホプキンズの捜査にそれなりの根拠が伴い、犯人に近づいていく過程が緻密になって、敵方との頭脳戦もらしくなっている。ただ、話がどうも派手にならず、内にこもってしまうのが難点。また、ラストもうまくまとめきれていない印象。
なかなか面白いが、(エルロイにしては)爆発力がない。
前作より向上した部分はあるものの失ったものは大きい。
エルロイファンはよりコントロールされた本作よりも、作りは雑だがエルロイらしさが無駄に横溢する前作『血まみれの月』に軍配を上げるのではなかろうか。
だが、エルロイは後退したわけではない。少しずつ前に進んでいる。
ホプキンズ三部作は面白いが、必要なパーツを少しずつ入手する過程であったようにも思える。『血まみれの月』『ホプキンズの夜』でそれぞれパーツを入手し、シリーズ三作目『自殺の丘』でエルロイは最後のパーツをつかんだ。すべてのパーツを手に入れて、念願だった自作『秘密捜査』の焼き直しに着手する。もちろんそれは出世作『ブラック・ダリア』であった。

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