(2020/07/27 21:03登録)
(ネタバレなしです) 長編82作もの弁護士ペリー・メイスンシリーズを書いたことで有名なE・S・ガードナー(1889-1970)の生誕100年記念としてカウフマン警視シリーズの警察小説やビル・アドラーとの共著の犯人当て懸賞小説「誰がロビンズ一家を殺したか?」(1983年)で知られる米国のトマス・チャスティン(1921-1994)が1989年に発表した新ペリー・メイスンシリーズ第1作の本格派推理小説です(といってもこの新シリーズは2作で打ち止めです)。ガードナー作品を扱っていた出版社やガードナーの遺族の事前検閲を受けて許可をもらっているそうで、しっかり仁義を切っていますね。ガードナー作品との相違点が気にならないわけではありません。シリーズ世界でのレギュラーメンバーは年齢を重ねないのですけど、名脇役だったポール・ドレイクやトラッグ警部を本書で引退させてポール・ドレイク・ジュニアやダラス警部補に役割交代させる必要性はなかったように思えます。被告に不利になりやすいのでガードナーが滅多にしなかった「被告を証言台に立たせる」ことをメイスンがためらわないのも違和感があります。とはいえ物語のテンポとスピード感はガードナーを彷彿させますし、目撃者多数の前で殺人を犯したと思われる男が自宅に戻って何者かに殺されるという不思議な謎解きも魅力的です。
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