秘密諜報員―アルフォンスを捜せ― 旧題『スパイ』 |
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作家 | エゴン・ホストヴスキー |
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出版日 | 1958年01月 |
平均点 | 2.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 2点 | クリスティ再読 | |
(2017/10/01 00:01登録) なんとなく古本屋で手に取って買った作品。作者はチェコでは有名な作家らしい。1957年にH=G・クルーゾーが映画化した「スパイ」の原作、ということである。映画は未見。 冷戦下のニューヨークに住む、チェコからの亡命者である精神科医マリクは、心理戦争研究所に所属のハワード大佐から、「アルフォンス」というコードネームで呼ばれる重要なスパイの精神的な問題の解決を依頼される。マリクのもとには、病気のふりをしたスパイなのか、精神的な問題を抱えた患者なのか区別がつかない人々が続々と訪れる。「スパイされている」とか「盗聴されている」とか、スパイ小説の定番ネタというのは、往々にして精神病の症状の一つだったりする、という「それを言っちゃあお終い」な事実が横たわっているわけで、話の輪郭はグズグズと崩れだし、誰がどの陣営か判然としない迷宮の中をマリクはあてどもなくさまよう。亡命チェコ人コミュニティが背景にあるようで、雰囲気は若干カフカ的。 評者はそこそこ「翻訳小説エンジョイ力」はある方だと思うが、本作はダメだ。スパイ小説は国際的背景をリアルに感じさせるように書くからこそ、「すべて妄想」から逃れることができるのであって、本作みたいなカフカ的迷宮のスパイ小説ともなると、本当に読んでいてわけがわからない。精神病とスパイとを重ね合わせるというのは、そもそも洒落にならない、自己破壊的なアイデアなんだろうな。観念的な会話が続くし、映画批評家の岡田真吉の訳だが、ほんとうに分かりづらい。まあチェコ語みたいなレア言語ができるわけじゃなし、重訳だろう。 |