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ミステリの祭典

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オルガニスト

作家 山之口洋
出版日1998年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 tider-tiger
(2017/09/24 22:16登録)
ドイツの音楽院で教鞭をとるテオドール・ヴェルナーの元にブエノスアイレスで活動している天才的なオルガニストの情報がもたらされる。このオルガニストはかつての親友であり、また、自分がその将来の芽を摘んでしまったあの青年ではないかとテオドールは予感する。

青春小説、サスペンス、SFが混ざったような作品で、個人的にはホラーでもあるように思えた。
音楽に魅せられて、その純粋さが狂気へと向かってしまった青年のとんでも話。
前半は音楽家を目指す若者たちの青春小説、後半に入って殺人事件が起こり、サスペンス、SFの要素が入り込んでくる。
後半のSF的な部分で白けてしまう人もいるかも。また、音楽、オルガンに関する蘊蓄がかなりあって、興味のない人には辛いかもしれない。
ミステリとしては犯人はまあ普通に読んでいれば誰でもわかる。動機もだいたい推測できる。ただ、ハウが少し凝っていて、これを主人公たちが音楽的な部分から解き明かしていくところに工夫がある。
ホームズの有名なセリフが言葉を多少変えて飛び出したりもしている。
ハッピーエンドともバッドエンドとも取れそうなラストは哀切であり、読後感には独特のものがある。個人的にはとても好きな作品。
ただ、変にあっさりしたところが目につく。三角関係がなし崩し的に解消されていたり、悲惨な出来事が起きたわりに主人公も彼もやけに冷静だったりとやや説明不足、書き込み不足と思えた。また、音楽に関する説明は多いが、音があまり聞こえてこないような気がした。
なにかにすべてを捧げてしまう人の話というのはチラホラ見かけるのだが、中島らも氏の遺作となった短編『DECOCHIN』(異形コレクション蒐集家に収録)における狂気などは本作に通ずるものがある。

酒見賢一氏の作品を書評したのでファンタジーノベル大賞受賞作を一つ。受賞作は半分以上は読んでいるが、ジャンルを特定しにくい作品、はっきりいって変な作品、そういうのが多く、一般的なファンタジー作品はむしろかなり少ない賞。総じて受賞作の文章はレベルが高く、かなり癖のある作品が揃っている。

※本作は三人称で書かれていたものを文庫化にあたって一人称に書き直している。やや無理もあるが、私は一人称に直された文庫版の方が好き。登録は三人称のハードカバー版

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