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ミステリの祭典

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死都日本

作家 石黒耀
出版日2002年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 tider-tiger
(2017/09/24 22:10登録)
メフィスト賞受賞作。力作。
破局的な噴火なるものが発生した時になにが起こるのか。
九州の火山が噴火。逃げ回る主人公の視点でその恐怖をたっぷりと味わうことができる。
ただ、主人公を絶命の危機にたびたび追い込んでちょこちょこと読者を脅かしてくれるが、そのやり方がいささかせこい。
ドキュメント風の作品。これは小説として問題があるという含みもあるが、迫真性に富んだ作品である。かなり怖ろしい。リアリティ(もっともらしさ)は充分すぎるほどにある。だが、この作品の場合は作品の性質上、リアル(事実)であるかどうかも重要だ。私は素人なので判断できないが、ネットで調べてみたところ大きな間違いはないらしい。
大仰なタイトルだが、虚仮脅しではなさそうだ。一読の価値はある作品。
小説らしさは希薄だが、読み物としては非常に面白い。

説明が多すぎるような気もするが、具体的な描写、数値を上げるなどして精緻に語ってくれるので、個人的には面白かった。自然描写が丁寧。
政治、経済に関して言及した部分には素直に頷けない点もある。
万単位で人が死んでいく話なので、個々の人間ドラマにはあまり見るべきものはない。ただ、近藤老人の話は妙に印象的でいまだに憶えている。

予見的な部分がけっこうある。
中国の潜水艦のエピソードなんかはもう笑ってしまうくらいリアル。近年実際に同じようなことが起こっている。
後年の政権交代を予見していたかのような書きっぷりも凄い。
ただ、現実に政権取ったのは……おろおろするばかりで具体的な方策はなにも取れず、本書のような展開にはならないでしょう。
※出版は2002年

作者は少年時代から火山に魅せられていた内科医。
「地震は怖いけど、火山はそれほどでもないよね」
妻のこの言葉に驚いたことが執筆の切っ掛けだったという。
作者の狙いは成功している。火山は本当に怖ろしい。
ただ、破局的噴火によってなにが起こるのかをこうして読んでしまうと、私は諦めるしかないなと思ってしまうのであった。

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