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ミステリの祭典

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夢幻地獄四十八景

作家 都筑道夫
出版日1980年08月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2017/09/24 11:28登録)
(ネタバレなし)
 作者のお得意芸? のひとつであるショートショート短編集。
 元版は1970年代の頭に講談社から単行本で出ているようだが、今回は80年の同社の文庫版で読了。書誌データは旧版を優先すべきだが、Amazonに該当のものが見つからないので文庫版のものを記入。

 内容は「い=意味深長」から始まって、「京=京人形」に終わる、いろは48文字の順列になぞらえた題名の掌編(基本的に文庫版で4ページずつ。鮮やかな真鍋博のイラストが各編についている)が四十八作並んでいる。
 作品の傾向はミステリ、オカルトホラー、幻想ファンタジー、SF、時代もの、落語的な掌編……までなんでもアリで、こうなってくると真鍋イラストもあって、星新一の諸作とあまり区別がつかない。
 都筑ものちの『悪魔はあくまで悪魔である』のあたりの頃になると意識的にショートショートの<サゲ>を回避した作風が板についてくる感じなのだが、ここらでは独自の作風をなんとか狙いつつも、結局は星新一風になっている手応え。
 まあ、ショートショートの定型としてはそれなりに面白い話もいくつもあるのだが。

 なお本書(文庫版)には表題作のほかに、第二部として同趣向のいろは順の連作ショートショート『狂訓かるた』というものを収録。これが単行本の際からあったものか文庫版で追加されたものかは不明で、そういう書誌情報はきちんと記載してほしい(「別冊新評・都筑道夫の世界」あたりを引っ張り出せば、判明するかもしれないが。)
 ただしこの『狂訓』の方は最後まで行かずに「を」で終焉。おそらく掲載誌の休刊か何かの事情があって、連作がストップしたものと思われる。
 
 最後に本書の標題タイトルはあまりに物々しくて大仰だが(元版刊行当時のミステリマガジンのレビューでもそう突っ込まれていた覚えがある)、作者の意図か担当編集者の狙いか、その辺はちょっと気になる。

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