home

ミステリの祭典

login
泣き虫弱虫諸葛孔明

作家 酒見賢一
出版日2004年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2017/09/17 20:01登録)
長年にわたり、「三国志」をテーマに書き継いできた小説が、ついに第5部で完結した。冒頭は、前巻までのストーリーのおさらいなのだが、作者は、登場人物たちを、ラーメンチェーン店の勢力争いに見立てて説明する。「これぞラーメン赤壁の戦い」などの文章が当たり前に出てくるから、大笑い。
でも、それは単なるおふざけではない。作者があたかも講釈師のように現代の目線で語ることによって、物語の自由度を獲得している。
本書は諸葛孔明の南征北伐と、彼が陣中で没するまでが描かれている。孔明に7度捕らえられたかが解放された末に恭順した孟獲との絡みを中心にした南征の経緯などは、実に克明。粗筋だけを取り出すと、オーソドックスな歴史小説に見える。
しかし作者の奔放な語りは、本作を特異なものにしている。そこから歴史小説の、さらなる可能性が浮かび上がってくる。日本人が好きな「三国志」を手玉に取った、快作にして怪作。作者ならではの、史実と人物に対する解釈を、楽しませてくれた。
感想は第5部のみだが採点は1部から5部までの総合評価にしました。

1レコード表示中です 書評