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ミステリの祭典

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新任刑事

作家 古野まほろ
出版日2017年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2017/09/03 11:17登録)
1950年代にスタートした警察捜査小説の名シリーズ、エド・マクベインの「87分署シリーズ」などは、供述書や捜査報告書などを入れてリアリズムを高めたものだが、近年、調書の類を作る作家がいなくなり、寂しい思いをしていた。
だがこの作品は、供述調書、指紋等確認通知書、捜査報告書、捜索差押調書などの文書を挿入して、リアルな警察の捜査活動を生々しく伝えている。
物語は、警察官になって6年目の原田巡査長が署長の命令で、「時効完成」のXデーまでの3カ月の警官傷害致死事件を担当し、全国指名手配犯の女を追跡する話だが、いささか冗舌。
というのも、元警察キャリアの作者は、ドラマや小説で無視されていたり誤解されたりしている仕事の細部を深く掘り下げて、実務の様子をたっぷりと紹介していくからだ。(ただ冗舌とはいえ、警察の実務上、時効前の送致は3カ月前が望ましいという新鮮な話も多々)。
軽快でコミカルでリアリスティックな警察小説だが、作者は元々メフィスト賞出身の本格派。
丹念な謎解きにより、意外な真相を明らかにして真犯人に迫る終盤は実にスリリングで読み応え十分。
少しケレンがありすぎて失笑する場面もあるけれど、これは作者のサービス精神のあらわれでしょう。

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