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ミステリの祭典

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動く屍体
九鬼澹名義 「妖奇」1950年8月号掲載

作家 九鬼紫郎
出版日不明
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2017/08/19 23:21登録)
(ネタバレなしです) 九鬼紫郎(くきしろう)(1910-1997)は甲賀三郎に弟子入りして(1年半ほど甲賀宅に下宿)九鬼澹(くきたん)というペンネームで1930年代にデビュー、戦前は短編ミステリー中心でしたが戦後は長編作品を書くようになり、本格派推理小説やハードボイルド、そして非ミステリーの時代小説を残しています。本書は九鬼澹名義で1950年に発表された短めの長編本格派推理小説です。密室状態の部屋で2人の男の死体が発見され、警察は銃を握っていた男がもう一方の男を殺して自殺したと考えます。ところが2人の死亡推定時刻に2時間の開きがあり、しかも銃を持っていた男の方が先に死んでいたことが判明、事件関係者の証言も微妙に怪しいなど謎が深まります。推理はあまり論理的でなく犯人当てとしてはいまひとつの出来ですが、死亡時刻の謎解きはなかなか印象的な真相です。もっともこの仕掛けは作者の創作ではなく、実際の犯罪記録からトリック借用しているところはヴァン・ダインの「グリーン家殺人事件」(1928年)を連想させます。

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