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ミステリの祭典

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図書館の魔女

作家 高田大介
出版日2013年08月
平均点9.00点
書評数1人

No.1 9点 tider-tiger
(2019/07/15 13:44登録)
~鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女(ソルシエール)」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。~amazonより

2017/08/11に第一巻を読んで書評を上げましたが、いまさらですが全四巻を読んでの書評を再アップいたします。一巻を読み終えた時点で予感していた通りの作品でありましたが、巻が進むにつれてどんどん面白くなっていったのは誤算でした。8点をつけておりましたが、9点とします。

国産ファンタジーの傑作であると同時にライトノベルの傑作であるとも感じました。ライトノベルのライトは軽いではなく、小説のお約束から解放された軽やかさだと自分は考えています。さらに言葉への偏執的なこだわりがライトノベルに命を吹き込むのではないかと。これは勝手な私の願望であり、たぶん本来のライトノベルとはキャラと設定が命なのでしょうが。とにかく、この作品はライトノベル的な要素が確実にあって、見方によってはライトノベルの一つの完成形ではないかと感じました。「これだ!」と思ったライトノベル作家は絶対にいると思っています。そうそう真似できるようなものではありませんが。

ファンタジーとしてはそれほど斬新な印象はありません。図書館を舞台にしたのはユニークでしたが、だんだん舞台は図書館から離れていきます。ただし、図書館=言葉の物語であることは変わりません。世界や設定はさほど凝ったものではなく、人物もライトノベルから拝借したような印象。物語も意外性はそれほどありません。
ですが、めちゃくちゃ面白い。ミステリ的な要素もけっこうあります。
言葉の戦い、言葉を巡る推理などはもちろん面白いのですが、戦闘シーンもなかなか決まっています。特に山中での動物との戦闘シーンは素晴らしいものでした。
物語を作るよりも、文章を書くよりも、まずは言葉そのものが大好きな作者が吐き出した言葉の海で溺れてみてください。

気になった点をいくつか。
1登場人物の情緒的な部分の書き方が弱点のように感じました。
2ニザマ国は宦官宰相に実権を握られておりましたが、ニザマ帝が復権を目論むと宦官宰相の一派は大した抵抗もせずに逃散。これはいささか都合がよいのでは。宦官宰相は軍を押さえてなかったのか? 宰相側の激しい抵抗、もしくは権謀術数があって然るべきではないでしょうか。
3外交を主軸とした物語だったら個人的にはえげつなさが欲しいところですね。

序盤での不要と思えるほどの精緻な描写について、自分はキリヒトのキャラクターに由来するものと考えておりました。キリヒトは他人の動きが見えすぎてしまうから、描写も精緻になるのかなと。ですが、あまり関係なかったようです。


以下 一巻を読み終えた時点での最初の書評です(2017/08/11 15:11にアップ。削除済み)。四巻すべて読んだあとも感想はおおむね変わっておりません。
 
メフィスト賞受賞作
全四巻のうち、まだ一巻しか読んでいないのですが、国産ファンタジーの傑作の予感がプンプンしますので、いてもたってもいられず箇条書きでフライング気味の書評を。全部読んだらまた改めます。
外枠は情報戦や外交に重点を置いたユニークなファンタジー。
内実は言葉の物語。
序盤のテンポが悪すぎる。徐々に展開が早くなってくる。
無意味とも思える動作などの細かい描写は? 
(肩を上げるだけなのに二行も使って描写したりする。)
こうした(特に序盤の)不必要に思える描写には何か意味があるのか。おそらくある。
正確精緻。歯ごたえはあるが、あまり味のない文章。
難解な単語がときおり飛び出すが、文章そのものはさほど難しくはない。
建物や服装の描写が細かいのはハイファンタジーだから仕方がない。
ハイファンタジーとしては異世界感に乏しい。
世界史や地理を学べば存在する既存の世界をアレンジして組み直したような印象が強い。
よく見ている少年とよく考えている少女のボーイミーツガール。
キャラ作り等にライトノベルの要素を持ち込んでいる。
エンタメ的盛り上がりには欠けるが、内容は素晴らしい。

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