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ミステリの祭典

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嗤う闇
女刑事 音道貴子シリーズ

作家 乃南アサ
出版日2004年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 E-BANKER
(2017/06/28 21:19登録)
ということで続編。“女刑事 音道貴子シリーズ”の作品集第三弾。
警視庁刑事部第三機動捜査隊立川分署(長い!)から、隅田川東署(架空?)へ異動となった音道貴子の活躍を描く。
2004年発表。

①「その夜の二人」=誰に聞いても「あの人が他人に恨まれるなんて有り得ない」という被害者。しかし、こういう人でも、だからこそ、恨む人間はいるということで、世の中って捻れてるよねぇと思う一編。結局は“甘えてる”ということなんだろうけど・・・
②「残りの春」=これは・・・超高齢化社会を迎える日本にとって、避けては通れない問題なのか? いくら有名人であろうと、だからこそ、実は心の奥は寂しいということなのかな・・・。何だか哀しくなってきた。今回初登場のキャリア刑事と貴子のコンビ。彼女が「やれやれ・・・」と感じてる様子がありありと分かって面白い。
③「木綿の部屋」=『凍える牙』以来、各所でシリーズに登場する滝沢刑事が再び登場。今回は本当の事件ではなく、嫁いだ娘と旦那とのイザコザに滝沢と貴子が巻き込まれる・・・というお話。いやいや、娘を持つ男親、しかも妻のいない男親の心中、お察しします! でも男と女って不思議だよねぇ・・・。こういうのを愛憎渦巻くっていうのかな。
④「嗤う闇」=今回は貴子の恋人・羽場昴一がレイプの現行犯で捕まってしまうというショッキングな幕開け。貴子の唯一の拠り所となっていた昴一まで作者はこんな目に合わすのか、と憤慨していたが、事件は予期せぬ方向へ進む。結局、これも男の捻れた心が引き起こした事件ということで、男のジェラシーも結構根深いんだね・・・

以上4編。
冒頭に触れたとおり、本作から下町・隅田川東署へ転勤となった貴子。
これまでの重大犯罪とは少し趣が変わり、いかにも下町っぽい、実に人間臭い犯罪にスポットライトが当てられる。
彼女自身も、前作「鎖」で負ってしまった心の傷を若干引き摺りながらも、犯罪と向き合っている感じだ。

シリーズファンとしては、心の傷に負けまいと必死に頑張る彼女の姿を見ることができて、まずは一安心!
でも、そろそろ三十路も半ばを過ぎてしまった彼女の今後について、まるで親か親戚のように心配してしまう。
警察という男性社会のなかで、肩肘張って必死に努力している女性。
そりゃー応援するしかないよなぁー
(私が上司なら、絶対頻繁に飲みに誘うだろうなぁ・・・。断られそうだけど・・・)

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