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ミステリの祭典

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女刑事 音道貴子シリーズ

作家 乃南アサ
出版日2000年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 E-BANKER
(2017/06/28 21:18登録)
最近、妙に気になる“音道貴子”である。
長編としては、直木賞受賞作「凍える牙」以来の登場となる本作。
2002年の発表。

~東京都下、武蔵村山市で占い師夫婦と信者が惨殺された。刑事・音道貴子は警視庁の星野警部補とコンビを組み、捜査に当たる。ところが、この星野はエリート意識の強い、鼻持ちならぬ刑事で、貴子と常に衝突。とうとうふたりは別々に捜査する険悪な事態に。占い師には架空名義で多額の預金をしていた疑いが浮上、貴子は銀行関係者を調べ始めた。しかし、ある退職者の家で意識を失い、何者かに連れ去られる!~

今回は刑事として、女性として、人生を左右するピンチに陥る音道貴子。
文庫版では上下巻分冊というボリュームなのだが、下巻は犯人グループに捕らえられた貴子の葛藤と恐怖、そして彼女を救う警視庁特殊班の救出劇が順に描かれる。
ライフルを複数所持する犯人グループに対し、慎重に慎重を重ねて捜査に当たる特殊班なのだが、時間を重ねるごとに貴子は徐々に疲弊していく・・・
読者としては、彼女の心理とシンクロし、「まだか、まだか・・・」と焦燥感を抱くことになる。
物語を大詰めを迎え、ラストも近いなか、ようやく解放される貴子は果たして今後刑事を続けていけるのか・・・

彼女の他にもうひとり、クローズアップされるのが犯人グループ紅一点の女性。
彼女が実に不幸なのだ。
ふたりの女性の運命が果たしてどうなっていくのかも本作の読みどころ。

まっ、いずれにせよ本作は完全にキャラ小説だな。
作者の彼女に対する思い入れが忍ばれるし、シリーズもののヒロインとしては、ミステリー界でも屈指なのかもしれない。
刑事ドラマのようなカッコ良さは一切なく、捕らえられ、レイプや死の恐怖でおののく、ひとりの女性、ひとりの人間として描かれる彼女。
やはり、どうしても気になってしまう存在だ。
ということで続編へつづく・・・
(「鎖」とは、まさに監禁された貴子を拘束していた存在であり、もうひとりの女性が失くしたくなかったものの象徴なのだろう・・・)

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