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ミステリの祭典

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殺人者たちの王
ジャスパー(ジャズ)・デント

作家 バリー・ライガ
出版日2015年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 tider-tiger
(2017/05/03 12:13登録)
服役中の連続殺人者ビリー・デントが脱獄してから二か月が経った。ビリーに殺人の英才教育を受けて育った一人息子ジャズにニューヨークで発生している連続殺人事件の捜査を手伝って欲しいと依頼があった。捜査を進める過程で徐々に忍び寄る影。これら一連の事件はジャズの過去にも密接に関係している? そして、犯人からジャズの元へ『ゲームへようこそ』とのメッセージが。

殺人鬼の息子ジャスパー・デントシリーズの二作目。原題は『GAME』邦題は殺人者の王。英語タイトルと日本語タイトルがかけ離れている作品はちょっと警戒してしまう。
売るための必要性もあれば、そのまま訳すと都合が悪い場合などいろいろありましょう。このGAMEもおそらく悩んだのでしょう。ダブルミーニングかなあと予想しましたが、やっぱりそうでした。これは普通に訳しようがない。
ここでネタバレしてしまったのは、ダブルミーニングにあまり意味がなかったので。
これは意味というか、驚きや感心をもたらして欲しかったところ。
前作よりも面白くなっている部分はあるも、総合的な評価ではやや落ちる印象。
相変わらずリーダビリティは高い。キャラもなかなかいい。
青春小説部分は前作と同じくらいの出来栄え。殺人事件は前作よりも込み入っており、工夫がみられる。そして、前作よりもスリルがあった。些細な点だが、ニューヨークに対する主人公と彼女の感じ方の違いなども面白かった。エンタメとしてはこちらの方が出来がいい。
ただ、前作は素直にジャズを応援できたのだが、本作ではちょっと鼻につく部分があった。
さらに問題あるのはリアリティ。前作はどうにか呑み込めたが、本作はいくらなんでも緩すぎる。もっとも引っかかったのは連続殺人鬼の息子を殺人事件の捜査に駆り出すという点。いろいろな観点からあり得ない。そこをどう納得させるかに注意が払われていない点が大問題。他にも緩い部分がいくつかあって「こういうことは本当に起こるかもしれないな」とはとても思えず興覚めしてしまう。このへんは読む人によって評価も変わろうかと思われまする。
それから終わり方。前作は露骨に次の展開を示唆するという汚い終わり方ではあったが、本筋の事件はきちんと片が付いていた。こっちは、まだ話が終わってないじゃないか!
これを単独の作品として出版するのは酷い。
蟷螂の斧さんがいきなり次作の『ラストウインターマーダー』から読んでしまったと書評されていたが、え? 大丈夫でした? 内容は理解できましたでしょうか? いまさらながら心配になってしまった。 
そんなわけで、次作もそのうち読んでみます。

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