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ミステリの祭典

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プラチナタウン
山崎鉄郎シリーズ

作家 楡周平
出版日2008年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 E-BANKER
(2017/04/24 21:07登録)
2008年発表。
作者は元々米国系企業(コダック社の日本法人とのこと)に勤務していたバリバリのビジネスマン。
そんな作者が描く「介護ビジネス」に纏るエンタメ小説。

~出世街道を外された総合商社部長の山崎鉄郎は、やけ酒を煽り泥酔。気が付いたときには膨大な負債を抱えた故郷・緑原町の町長を引き受けることに・・・。だが、就任して分かったことは、想像以上に酷い実情だった。私腹を肥やそうとする町議会のドンや、田舎ゆえの非常識。そんな困難にくじけず鉄郎が採った財政再建の道は、老人向けテーマパークタウンの誘致だったのだが・・・~

作者のプロフィールからすると、今回の話はフィクションとはいえ、相当デフォルメされてるなと感じた。
どこかで聞いたような話を二つ三つつなげて、お手軽なエンタメ小説に仕上げた・・・
そんな感覚は拭えない。

ビジネスを題材としたエンタメ小説というと、昨今ならどうしても“池井戸潤”が思い浮かんでしまうのだが、プロットこそ共通している部分はあるとはいえ、ふたりの間で大きく違うのは、ずばり「熱量」の差!
池井戸なら、理想に燃えた主人公が、幾多の試練に揉まれながらも、仲間の協力を得て、最終的には勝利を勝ち取る・・・そんなプロットに仕上げるはず。
しかし、楡氏はそこまで熱くはならない。
それが「冷静」ということか、或いは「リアリティ」ということなのかもしれない。

でもなぁー、この話、明らかに「起承転結」がないんだよねぇ・・・
普通は「転」のところで、逆境や困難に陥る主人公が描かれるはずで、そこがプロットの鍵になるんだけど・・・
本作では割とスムーズに成功しちゃってるし・・・

そういう意味では作者の創作姿勢に疑問符を抱かせる作品かもしれない。
(読者を楽しませるかどうかという観点でね)
あと、介護関連の薀蓄は2017年の現在からすると、若干古くてズレがあるので注意が必要。

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