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ミステリの祭典

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ロマン・ノワール フランスのハードボイルド
クセジュ文庫

作家 事典・ガイド
出版日1991年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 クリスティ再読
(2017/04/23 12:42登録)
評者が子供の頃、フランス映画というとギャング映画だった...けど、80年代に入って、ヨーロッパ産娯楽映画がほぼ壊滅してしまうと、ここらも取り沙汰されることが少なくなってしまったのが評者はとても残念である。アラン・ドロン、ベルモント、ギャバン、ヴァンチュラといったフランスのスターたちが演じたギャング映画の原作になった小説ジャンルについての、網羅的な手引書が白水社の文庫クセジュというかなり意外なところに所収されている。なかなかここらについてのまとまった情報はないので貴重である。
文庫クセジュというと「フランスの岩波新書」でこれを訳しただけのものなので、内容はガチでフランス人向け。ロマン・ノワールの代表的なシリーズである、ガリマール社の「セリ・ノワール」の変遷(初期は翻訳中心で、徐々にフランス人によるパスティーシュが書かれ..)と、このジャンルを確立した、フランスの暗黒街出身作家であるアルベール・シモナン、オーギュスト・ル ブルトン、ジョセ・ジョバンニの登場、それから68年5月革命から生まれたマンシェットとA・D・Gに触れ、79年のロマン・ポラールのブームから90年代初めまで扱っている。
網羅的な通史なんだけどフランス人向けだから、作品・作家の特徴を突っ込んで書いているよりも出版状況の説明の方が多いし、邦訳状況はというとマンシェットだとさすがに6冊くらい翻訳があるようだが、A・D・Gはどうも2冊しかないようだし、ジョバンニは多くても、隠語だらけのシモナンとブルトンは訳し時を誤ったようでほぼ看板作品の「現金に手を出すな」「男の争い」しか訳されてない..という情けない状況である。出てくる作品のほとんどが未訳で内容の見当もつかない...
だから日本の読者にとってはほぼタイトルを眺める資料的価値しかない。訳の難しい作品も多いから仕方がないのだろうけども...
(「墓に唾をかけろ」の参考資料と、「現金に手を出すな」「リコ兄弟」について書く下調べで読みました。そのうちここら書きます)

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