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ミステリの祭典

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墓に唾をかけろ
別題『お前らの墓につばを吐いてやる』

作家 ボリス・ヴィアン
出版日1967年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 クリスティ再読
(2017/04/17 17:38登録)
フランス人は「アメリカ」に対して、微妙な感情をずっと持ってるわけだけど、第二次大戦後の「アメリカ趣味」(まあ日本でも似たような現象があったわけだが)を象徴するような、フェイクなハードボイルド小説である。アメリカの黒人脱走兵が書いた、という設定でボリス・ヴィアンが書いて、当時のフランスで大ベストセラーになったんだが、風俗紊乱の罪で告発されて発禁処分..という面でも有名な作品である。
「白人どもを殺せ! おれの黒い血が騒ぐ -- 真夏に爆発する若者たちの暴力とセックスを描き、一大スキャンダルを巻き起こした問題作」というのがオビの文句で、チェイスの「ミス・ブランディッシの蘭」と似たような作品といえばその通りだけど...今読むと、前半の無軌道な乱交の描写の方が生彩があってボンクラな良さがあるんだが、後半の黒人の血による復讐という話の方が観念的で血みどろなファンタジーみたいなものでそんなにスゴくはない。描写も頑張ってスゴんでいる感じ。とはいえ、本作あたりがセリ・ノワールの元祖みたいなものだし、ヴィアンに代表される「アメリカかぶれな若者」の最後の世代のアイロニカルな自画像としてゴダールの「勝手にしやがれ」を見ることができるあたり、歴史的な価値は絶大、ということになると思う。
作中に出てくる「トリプルゾンビ」ってカクテル飲んでみたい..(三種類のラム酒を混ぜて作る度数がめちゃ高いのに口当たりのいいカクテルらしい)。

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